韓国のクリニックへCT・MRI画像を持参する:DICOMデータ・形式・医師が必要とするもの

フィルムの写真ではなく断層データそのものが、手術計画で実際に使える形式です。Photo: National Cancer Institute / Unsplash
結論から先に 韓国のクリニックへCT・MRI画像を持参する場合、スキャナーが出力する生データ形式であるDICOMで持ち込めば使えます。フィルムの写真や読影レポートだけでは手術計画には使えません。ソウルのクリニックの多くはDICOMを収めたUSBメモリを開けますが、CD-Rを読める端末は減っています。読影レポートは別に携行し、手術計画目的の撮影なら薄層(thin slice)データを依頼してください。医療機関をまたぐ画像の電子的なやりとりは国際間では事実上存在しないため、受け入れ可能な媒体を渡航前に確認することが前提になります[3][4]。
この記事の内容
「画像を持っていく」とは具体的に何を持つのか
「自分の画像」と呼ばれるものには、性質の異なる三つがあります。第一はDICOMデータです。CTやMRIのスキャナーが出力する数百から数千枚の断層ファイルで、各ファイルにスライス厚・撮像方向・造影のタイミング・装置設定といった情報が付随します。第二は印刷されたフィルム、あるいはシャーカステンに掲げたフィルムをスマートフォンで撮影した写真です。第三は読影レポートです。
このうち、執刀医が任意の断面を切り直し、ミリ単位で計測し、ウィンドウ設定を変えて骨と軟部組織を分け、三次元再構成を作れるのはDICOMデータだけです。DICOMはDICOM標準化委員会が策定し、NEMAが事務局を務める規格で、委員会自身が医用画像情報の通信と管理のための標準と位置づけています[3]。
フィルムの写真は「画像の画像」です。解像度も計測の基準も、コントラストを調整する余地も失われています。クリニックは受け取って目を通しますが、手術計画には使えないと説明することになります。一点だけ覚えるなら、「画像のコピー」ではなく「DICOMデータ」を依頼する、という言い方です。
韓国のクリニックが過去の画像を求める理由
顔面や鼻の手術では、過去のCTから鼻中隔の弯曲、下鼻甲介の大きさ、副鼻腔の炎症、以前に入れたインプラントの位置と材質、移植採取部位、骨の厚みが読み取れます。これらは計画を裏づけるだけでなく、計画そのものを左右することが少なくありません。再手術では、前回に何が行われたかを確かめられる唯一の確実な記録が画像である場合もあります。輪郭形成や顎の手術では、修正量を測る基準となる骨格の初期位置を画像が記録します。
画像があるかどうかで相談の質も変わります。自分のデータを見ながらであれば、何がどこまで可能で何が難しいのかを具体的に聞けます。複数のクリニックで意見を集めるなら、同じデータを渡してこそ提示された計画の差が意味を持ちます。詳しくは韓国で手術を受ける前のセカンドオピニオンの取り方をご覧ください。
実務的な理由もあります。手元の画像があれば、再撮影の費用と、CTであれば被ばくを避けられる可能性があります。ただしその効果は期待されているほど確実ではなく、根拠は後段で整理します。
日本の医療機関からDICOMデータを受け取る実務
依頼先は撮影を指示した主治医ではなく、医事課・医療情報室や放射線科の受付です。読影する部署と、データを交付する部署は通常別です。日本では個人情報保護法に基づく診療記録の開示請求、あるいは他院紹介の一環としての画像貸出という二つの経路があり、後者のほうが短期間で済むことが多いです。紹介状(診療情報提供書)を併せて依頼すると、画像と文書が一度に揃います。
交付媒体は現在もCD-RやDVD-Rが標準で、ビューアを同梱した形で渡されるのが一般的です。ソウルのクリニックでは光学ドライブのない端末が多いため、受け取ったCD-Rの中身を自分でUSBメモリにコピーしておくことを強くおすすめします。費用は数百円から数千円程度、交付までの期間は即日から一週間程度と施設差が大きいため、渡航の二、三週間前に依頼を始めてください。
依頼時に確認する項目は三つです。薄層データが含まれているか、造影の有無、そして読影レポートが付くか。帰国後のフォローを日本のかかりつけ医に依頼する場合は、韓国で撮影した画像も同じ形式で受け取っておくと連携が途切れません。クリニック側が発行する書類については韓国のクリニックで受け取れる診断書と勤務先提出書類で扱っています。
持ち運べる媒体と、現地で開けない媒体
形式よりも、現地で物理的に開けるかどうかが先に問題になります。光学ディスクは日本の医療機関では今も標準的な交付媒体ですが、到着先で最も開けない可能性が高い媒体です。これは韓国に限った話ではありません。2026年3月、米国放射線医学会(ACR)は他の四団体と連名で米国保健福祉省に意見を提出し、画像の電子的交換を進めCD等の物理媒体を段階的に廃止するよう求め、既存の連邦医療IT施策は電子カルテのデータ中心で医用画像を一貫して支えていないと指摘しています[4]。
媒体 | ソウルのクリニックで読めるか | 主な失敗の形 | 対処 |
USBメモリ(DICOM) | 最も確実 | 専用ビューアが起動しない、階層の深いフォルダに埋もれる | 渡航前に自分のPCで開けるか確認する |
CD-R・DVD-R | 読めないことが多い | 光学ドライブがない | 自分でUSBにコピーして両方持参する |
病院の患者用ポータル | 場合による | 海外からのログイン制限、期限切れ、認証コードが国内の電話番号に届く | 渡航前にDICOMを端末へ保存し、リンクは予備扱いにする |
暗号化・パスワード付き媒体 | パスワードが手元にあれば可 | パスワードが交付元の部署にしかない | 受け取り時に書面でパスワードを確認する |
フィルム・フィルムの写真 | 見られるが計画には使えない | 計測基準と断層データがない | 補助資料として持参し、主たる記録にはしない |
別々のUSBに二部持つ費用はごくわずかで、単一障害点をなくせます。一つは機内持ち込みの手荷物に入れてください。
避けられる三つの失敗 フィルムの写真しか持っていない。パスワードが日本の医事課にしかない暗号化媒体を持ってきた。韓国からの接続では認証できないクラウドのリンクだけを頼りにした。いずれも、自費かつ自分の日程で再撮影するほか回復手段がないのが実情です。 |

DICOMを収めたUSBメモリが、到着先で最も開ける可能性の高い媒体です。Photo: Sara Kurfess / Unsplash
読影レポートが画像だけでは分からないことを補う
読影レポートは画像の言い換えではありません。読影医の解釈、意味があると判断した計測値、そして特定の論点だけを追う執刀医が見落としうる偶発所見が記載されます。装置の機種、スライス厚、撮像範囲、造影の有無も通常は記録され、これらは受け入れ側のクリニックがそのデータで何をどこまでできるかを決めます。
見落とされやすいのはスライス厚です。一般的な診断目的で厚いスライスで撮られた検査は、その目的には十分でも、精細な三次元再構成には粗すぎることがあります。手術計画のために撮影するのであれば、薄層シリーズが取得されているかを確認し、持参する媒体にそのシリーズが入っていることを確かめてください。
レポートが日本語のみの場合、所見と結論の平易な英訳があれば相談には足ります。公証翻訳までは通常不要です。ただし当日に臨床的な内容を誰が通訳するのかという線引きは別問題です。韓国での手術同意書は誰が通訳してよいのかとクリニックの語学コーディネーターの権限の範囲と限界を併せてご確認ください。
それでも現地で再撮影になる場合
失敗ではなく、起こりうることとして想定しておくべきです。理由として妥当なものは、検査が古く現在の状態を表していない、スライス厚や撮像範囲が必要な部位を含まない、撮像プロトコルがクリニックの計画ソフトの前提と異なる、記録管理上の理由で自院撮影を基本としている、などです。再撮影の提案が自動的に過剰診療を意味するわけではありません。
求めてよいのは三点の明確な説明です。既存の検査がなぜ不十分なのか、新たな撮影で計画の何が変わるのか、費用はいくらか。CTであれば被ばくも伴うため、反射的な再撮影ではなく臨床的な理由が示される必要があります。
画像の費用は見積もり提示後に追加されやすい項目です。手術見積もりと併せて書面で示してもらってください。内国人見積もりと外国人見積もりの差の読み方と執刀医の専門医資格の確認方法は、この段階で説明をどこまで信頼するかの判断材料になります。
研究が示していること
この記事の前提である「過去の画像が参照できれば再撮影は防げるのか」という問いについて、規模の大きい研究が二つあります。結論は、一部の検査種では効果が示唆される一方、CTでは効果が示されていない、というものです。
医療情報連携と再撮影(Vestら、2014年)
米国ニューヨーク州の11郡を対象とする地域医療情報連携(HIE)のアクセスログと民間保険の請求データを2009年から2010年にわたり突合した縦断コホート研究です。同意した成人196,314人を対象とし、そのうち18%が少なくとも1件の画像検査を受け、対象期間の画像検査は56,306件でした。全体では7.7%が90日以内に再検査されていました。HIEが参照された場合の再検査率は5.2%、参照されなかった場合は8.0%で、調整オッズ比0.75(95%信頼区間0.65〜0.87)、およそ25%低いオッズでした[1]。超音波の再検査は44%、単純X線は21%低下しました。一方でCTでは関連が認められず、著者はその比較の検出力不足を理由の一部として挙げています。限界として、臨床的に妥当な再検査と不要な再検査を区別できないことが明記されています。
読者にとっての意味:臨床医が過去の画像を実際に参照できれば再撮影は減る傾向がある一方、CTはその効果が示されなかった唯一の検査種です。手元のCTは「相談の質を上げるもの」と位置づけ、「新規撮影を確実に代替するもの」とは考えないほうが現実的です。
医療機関をまたぐ再撮影(Turbowら、2024年)
2018年の米国メディケア全国データを用い、3,436施設にわたる患者269,348人・入院と再入院の組275,860件を対象に、30日以内の再入院時に同一部位の画像検査が繰り返されたかを調べたコホート研究です。全体では14.3%に再撮影がありました。同一施設への再入院に比べ別施設への再入院では再撮影の調整オッズがわずかに高く(AOR 1.05、95%信頼区間1.02〜1.08)、同一のHIEに参加していても低下は見られませんでした(AOR 1.06、95%信頼区間1.00〜1.13)。著者は、実装されている形の情報連携は再撮影のオッズ低下と関連しなかったと結論しています。主な限界は、連携への参加は「利用可能性」の代理指標であって臨床医が実際に参照した証拠ではないこと、および一部の再撮影は臨床的に妥当であることです[2]。
読者にとっての意味:一国内でも、施設間の再撮影は制度的な情報連携で解消されていません。記録系も言語も規制も異なる国際間では、画像を代わりに運ぶ仕組みは存在しません。運搬手段は患者が携行するコピーそのものであり、だからこそ媒体の選び方がこれだけ重要になります。
よくある質問
フィルムの写真でも大丈夫ですか
持参は可能で、全体像の共有には役立ちますが、手術計画には通常使えません。写真には計測の基準も断層データもないため、距離を測ることもコントラストを調整することもできません。DICOMの代わりではなく、補助資料として持参してください。
USBの代わりにクラウドのリンクでも受け付けてもらえますか
受け付けられることもありますが、最も不確実な方法です。ポータルのリンクは海外からのログイン制限、有効期限、国内の電話番号に送られる認証コードなどで開けなくなります。渡航前にDICOMを手元の端末へ保存し、リンクは予備にとどめてください。
画像やレポートの翻訳は必要ですか
画像そのものに翻訳は不要です。DICOMの付随情報は標準化されています。レポートについては、所見と結論の平易な英訳があれば相談には足ります。公証翻訳は通常、保険請求や法的手続きのためのものです。
何年前の検査まで使えますか
その後に何があったかで変わります。前回手術より前の画像は、出発点の解剖を示す記録として価値がある一方、現状を表すはずの画像は時間の経過と施術の積み重ねで妥当性を失います。一律の期限を当てはめるより、相談前にデータを送り、十分かどうかをクリニックに判断させるのが確実です。
画像を持参すれば費用は下がりますか
下がる場合もありますが、当て込むのは避けたほうがよいです。プロトコルや記録管理上の理由で再撮影になることは珍しくなく、前述の研究も、過去の画像が参照可能であることがCTの再撮影を確実に防ぐとは示していません。いずれの場合でも分かるように、画像費用を見積もりに項目として明記してもらってください。
参考文献
Vest JR, Kaushal R, Silver MD, Hentel K, Kern LM. Health Information Exchange and the Frequency of Repeat Medical Imaging. American Journal of Managed Care, 2014;20(11 Spec No. 17):eSP16-eSP24. PMID 25811815.
Turbow SD, Culler SD, Vaughan EC, et al. Impact of Electronic Information Exchange on Repeat Imaging During 30-Day Readmissions Among Medicare Beneficiaries. American Journal of Managed Care, 2024;30(2):66-72. PMID 38381541. doi:10.37765/ajmc.2024.89493.
DICOM Standards Committee (NEMA). DICOM PS3.1, Introduction and Overview. NEMA Standard PS3, 2026.
American College of Radiology, RSNA, AAPM, ASRT, SNMMI. Radiology Groups Urge HHS to Support Image Sharing. American College of Radiology, 2026-03-19.
関連記事
この記事について。Korean Plastic Surgery Infoは、韓国での施術を検討する海外患者向けの独立した情報サイトです。当サイトはクリニックを所有・運営しておらず、施術の予約に対する手数料も受け取っていません。本記事は引用元に基づく一般的な情報であり、医学的助言ではありません。個々の既往や状態を考慮したものではなく、画像検査・適応・手術計画の判断は、診察を行った医師に委ねられます。



コメント